電子機器のプリント回路基板上には、IC/LSI間の信号をやりとりするために電気配線が用いられますが、扱う信号が高速化するに従って単純につなげれば良いわけではなく、その伝送特性を考慮する必要があります。例えば、特性インピーダンスが整合していない伝送線路を用いると反射が生じ、伝送波形が歪んでしまいます。また、損失が大きい材質を使用すると、伝送途中で電圧振幅が小さくなり受信ICで正しく受信できません。
伝送線路の設計では、上記だけでなく伝送モード変換やそれに伴う不要電磁波放射の問題があります。これらは、自身の通信性能を劣化させるだけではなく、他のシステムへ悪影響を及ぼす可能性があります。我々の研究室では、特性インピーダンスや損失だけではなく平衡度という新しいパラメータを導入し、伝送モード変換や不要電磁波放射を抑制する設計手法を提案しています。
平衡度とは、電気的な対称性を意味し、対よりケーブルなど対称な伝送線路では0.5となり、同軸ケーブルのような完全非対称な伝送線路では0、プリント回路基板上のマイクロストリップ線路では0から0.5の値となります。平衡度が異なる伝送線路を接続すると、信号の伝送を担っている電磁界の形が一部変形し(モード変換)、外部へ放射しやすいモードとなってしまいます。そこで、平衡度が変化する点において設計を工夫し平衡度の差が小さくなるような設計を加える事でモード変換を抑制し、不要電磁波放射を低減することに成功しました。