メタマテリアルとは人工的な構造によって作られた自然界にはない特性をもつ物質のことを言います。たとえば右図のような誘電率(ε)透磁率(μ)の平面において通常の物質は第一象限にありますが、人工的な構造を構成すると負の誘電率や負の透磁率も実現できます。しかし、所望の性質を示す物質構造を設計しようとすると、複雑な構造における電磁現象を把握する必要があり、現在ではまだ手探り状態です。それに対して、複雑な導体構造中の電磁現象を、電気回路を用いて記述することにより、設計への道を開くことを目指しています。
Maxwell方程式では電荷と電流が作る電界と磁界の振る舞いをおもに扱いますが、回路モデルでは電荷と電流の振る舞いが重要になります。電荷と電流の役割をうまく電気回路に変換できる構造の1つとして、図のような導体球と導体線から成る構造を扱います。このような構造では電荷と電流の自分自身への作用以外は、右側の図のような点電荷と線電流によるモデルを用いることにより、導体構造と等しいトポロジーをもつ単純な回路モデルを導出することができます。
たとえばメタ原子としてよく用いられる下図のような構造では、単純な6次元の常微分方程式で表現される回路モデルが得られます。その周波数特性を電磁界解析(FIT)と比較したものが右下図です。簡単なモデルにもかかわらず、膨大な要素数で解く電磁界解析に近い特性が表現できています。このように、Maxwell方程式の構造を保った形でモデルを導出することにより、電磁界解析よりも大幅に単純化された等価回路モデルが得られ、共振や結合などの電磁現象のメカニズムが明らかになることから、電磁現象の設計に向けた研究を進めています。