電磁回路工学研究室では,「物理と数理にAIも加えて新しい回路設計の世界をつくる」をモットーに、回路の理論からシステムへの応用まで幅広いテーマで研究を行っています.
波としての高周波3D回路設計
集積回路の高速化,5G/6Gの高速化,SiCやGaNなどのデバイスの高速化など,現代の回路は日々高速化しています.回路は電磁現象を用いて様々な機能を実現していますが,高速化すると電気の電磁波としての性質が支配的になります。しかし、現在の設計手法ではこの性質が十分考慮されていない場合も多く,回路の誤動作を引き起こしてしまいます.必ず動作する頑健な回路を実現するEMC設計を目指して、波としての振舞を元にした3D構造の回路を設計する手法を研究しています.また,波としての振舞を考慮した回路設計を利用すると,自然界にない電磁的な性質を微細な構造により実現するメタマテリアルの設計も可能になります。当研究室では,このような波としての性質に基づく回路設計を目指し,AIも利用しながら取り組んでいます.
- 遅延電磁結合を含む回路設計
- メタマテリアルの設計
- 単導体線路による回路設計
- コモンモード制御によるEMC設計
パワーエレクトロニクス回路のディジタル設計
ディジタル技術とパワーエレクトロニクスの進化により、従来の回路では実現できなかった回路が可能になってきています。例えば、高速大容量なエネルギー伝送を行うためには,エネルギーの送り手と受け手の協調が不可避ですが,情報ネットワークを利用することによりミリ秒オーダーで送り手と受け手が同期してエネルギーをやりとりすることが可能になります。当研究室ではこのようなエネルギー伝送をP2Pエネルギー伝送と名付け、高速大容量のエネルギー伝送の実現を目指しています。他にも、スイッチによる時変性を利用したエネルギー収穫終端や非線形ダイナミクスに基づく回路設計など、新しいパワーエレクトロニクスの提案をしています。
- P2Pエネルギー伝送
- 非線形2ポート回路の大域設計
- エネルギー収穫無反射終端
回路設計のためのAI開発
回路設計においてもAIの活用が導入されてきていますが,一般的な機械学習を利用した場合が多く,その性能は現時点ではあまり高くありません。当研究室では,回路における物理現象やネットワークの特性を反映させた独自のAIを開発しながら、AIにとって何がおいしいデータなのか,AIの気持ちになって考えながら育てています。
データ科学に基づく電力ネットワーク解析
電力ネットワークにおいて,TDR(Time Domain Reflectometry)による故障点や未事故状態の検出法の研究を行っています。また,センサーによって得られるビッグデータからの情報抽出に関する研究も行っています。
モデルベース回路設計
現在の回路設計では、実際の回路を作ってはじめて検証できる性質が多くありますが、そのような性質も含めて回路モデルとして設計できるモデルベース回路設計を開発しています。